フードロスという言葉が社会問題として顕在化して随分月日がたちました。意識も実態も改善されてきているとは思いますが、まだまだ“ロス”は大きいと感じます。そんな中、パンの販売で“フードロス・ゼロ”を続けているパン屋さんが目黒区内にあります。それは都立大学駅からほど近い雑居ビルにある『ぱん工場 寛(ひろ)』で、経営者は田中朋広さん(55歳)。
田中さんは大学卒業後、大手電機メーカー勤務を経て、「飲食店関係の仕事で何かを」と考えていた折、自らはパン作りの担当をと都内のパン屋さんで修行を積まれました。パンは、イースト菌を取り扱うため、学生時代の専攻が化学だった田中さんには専門分野に近い上に「何だか実験をしているようでおもしろいな」と思ったそうです。実際にパン屋さんで働いてみると売れ残っての廃棄も多く、会社勤めの頃から食品ロスが出ることは問題と考えていたため、「すべてを注文製造し販売、配達」を考案し開業したとのこと。
しかも田中さんはパンを夕方から作り始め、深夜から明け方まで自転車のペダルをこいでお客様に届けています。驚いたことに届け先は横浜から日本橋までその距離は連日30㎞。当初は近隣への新聞チラシの配布から始めたため「こんなに広範囲になるとは思ってもみなかったのですが、雑誌やテレビへの露出により結果的に現在のようになりました」。そして、職人としてパンが残ることは雪や大雨の中を配達する大変さよりも嫌なことなので年末年始の5日間の休業以外はこの16年間連日、このスタイルで商いしてきたそうです。
フードロスを出さないことと、自力での配達販売に徹している田中さんに現状のフードロスについて伺うと「インターネットなどによる便利なツールが充実してきているのでそれを利用し、消費者ひとりひとりが必要なだけ購入するようにすればロスはより減るように思いますし、経営的にも助かります」と、なるほど……明快な答えが返ってきました。
【 ぱん工場 寛 】
(住所) 目黒区中根1-6-10 名店会館 2階
(お休み ) 年末年始
※ オーダーの方法:前日午前中までに下記メールアドレス宛事前予約
pankoubahiro@p00.itscom.net
お届け地域:目黒区・世田谷区・大田区ほか
お店での受け取り:事前予約の際に店舗での受取りを申出る(受取時間は要相談)