単なる再利用を超えて眠っているグローブに付加価値を
中古の野球のグローブを再生し販売するという事業を展開している会社があると聞き、大田区蒲田にある同社の直営店を訪ねました。
その会社は「野球のグローブ再生工房Re-Birth(リバース)」。出迎えてくださったのは代表の米沢谷友広さんです。
米沢谷さんは高校時代、秋田商業高校が甲子園に出場したときのメンバーで、社会人となってからは大手IT企業で野球用品の商品企画に携わったのちに「Re-Birth(リバース)」を立ち上げ独立しました。
そこにはどのような狙いがあったのでしょうか。
「私自身が高校球児であったことから、野球は用具にかかる費用が大きく、そのために野球離れの傾向があることを残念に思っていました。一方、経験上、子どもの頃から高校の部活まで野球を続けていたとすると、その人の手元には成長やポジションの変更などで、10個前後のグローブが残されているものです。これは隠れた資源であると考えたのです」
ここからグローブを生まれ変わらせて再利用するというアイデアが生まれました。米沢谷さんのお話によれば、グローブは正しいメンテナンスをすれば、20年ほど使えるそうです。
「ただし、学生の場合は卒業すれば使わなくなってしまうことが多いですし、子どもの頃のグローブは小さくて使おうにも使えません。つまり寿命を十分に使い切っていないのです。さらにユーザー自身がメンテナンス方法を知らずに放置されていることもあります」
経済的なハードルを下げるため、再生グローブを新品の半額程度で提供
しかし、店内に並ぶグローブは、どれも一見するととても中古品には見えません。
「当社で販売するグローブは、ネットで査定して買い取る、野球チームや野球に関わる団体と提携する、そして個人からの寄付を受けるという、主に3つの流れで入ってきたものです。これを高度な技術を持つ当社の職人が再生して販売しています。単なる中古グローブではなく、職人の技によって付加価値を付けているのです」
それでも新品のグローブのおよそ半額ほどに設定できるそうで、これから野球を始めようとするときのハードルも下がります。
「私は新品か中古かという選択肢のほかに、「Re-Birth(リバース)」で再生したもの、という新たな選択肢を加えたいと思っています。そうすれば高価な新品を買わなくても、十分な品質のグローブで野球を始められるからです」
野球のグローブの再生販売というユニークな事業ですが、米沢谷さんは「選手の手の延長というべきグローブには愛着がこもるものです。その気持ちを大切に次のプレーヤーに引き継いでいきたいと考えています」と語ってくださいました。
■野球グローブの修理・リメイクの専門店「Re-Birth(リバース)」
野球グローブの修理やリメイクと買取をウェブサイトと蒲田店、二子玉川店、多摩永山店で行っている。