身近な中目黒公園で驚きと発見の連続
私たちは毎日、毎日、木々や草花の緑にいやされ、またその恩恵に浴して日々を重ねています。ところが、ふと思いをめぐらせてみると果たしてこの「緑」のことをどれほど知っているのでしょうか?
そこで今年は「めぐろスマートライフ」のecoライフライター研修として、かつてTBSラジオの『子ども電話相談室』の回答者を務めたこともある樹木医の石井誠治さんに中目黒公園とその界隈の木々や草花を題材として緑を学ばせていただきました。
10月9日、あいにくの雨のため、まずは座学。
「植物は光合成により自分で必要な物を作り出すことができるため、動かない究極のエコライフを選択しました」と開口一番。
「ああなるほど、そう言われれば…」。
木の幹の木部は大半が死んだ細胞で、葉は生きた細胞で光合成をする化学工場です。生きた細胞だから老化すると落葉します。
木も草花も光合成で酸素を出すと言われていますが、生きているので呼吸もしており、夜間は酸素を取り入れ二酸化炭素を出しているのだそうです。
そうこうするうちに雨が小降りとなり、中目黒公園歩きがはじまると、まずはこの公園の「推し」とも言うべきジャカランタへ。
石井さんもその大きさに目を見張っていましたが「この木、熱帯では花が先に咲きます。日本では寒さのため落葉して、葉が伸びてから花が咲きます。環境に反応する現象なのです」。
園内を進みながら「トウモロコシの原産地は南米ですが、ヨーロッパに渡りシルクロードを通り、中国から伝わったため『唐のモロコシ』です」。
柿を見つけると「ゴマの入った柿のゴマは、固まったタンニンです。未成熟の時に外敵に食べられないために水溶性タンニンは渋いのです。シブガキの渋を固める作業が渋抜きといわれます。富有柿や次郎柿は熟れるとタンニンが抜ける品種で、渋抜きは必要ありません」。
ひとつひとつの解説がすべて“目がテン”。
目黒川の桜・ソメイヨシノのルーツは?
ふだん何気なく見ている目黒川の桜は「ソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒガンという野生種の自然交雑で生まれた品種です。目黒川に枝垂れているソメイヨシノの枝は、横に伸びた枝が先端が重くなって枝垂れているのです」
最近とみにその繁殖が目立つ路傍の草を私が「これは何ですか」と伺うと「こちらは“ホソエコミカンソウ”、こちらは“ハゼラン”」と即座に教えてくれました。
途中、丸い支柱に囲まれた枯れた桜の横にエノキが成長している様子を見て「桜に止まって鳥が落としたふんから成長したエノキを、枯れた桜の横に残した結果です」と教えてくださいました。
街路樹については、「代弁すれば木々は“もう勘弁して”と思っていますよ」。
また「桜は戦前日本をアピールするパワーだった」と話は文化論にまで広がり、それはそれは充実した講座でした。