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新しい都市農業に挑戦するぶどう園の若夫婦

今年のぶどうも美味しかったよ、その言葉が支え

みなさんは目黒区に生産緑地(畑)があることをご存知ですか?

―その中の1つ、根岸ぶどう園をご紹介します―

 ここは、江戸時代から続く農家で、約30年前から「根岸ぶどう園」として営んでいます。

4年前に息子さんご夫婦が後継者となり、お父さんの代から始めたぶどう園を引き継ぎ、新しい農業の形を目指して日々勉強しています。

「都心でぶどう狩りができる観光農園」として近隣や区内のみなさんに大変喜ばれています。

 ※ 参考:目黒区の生産緑地は12地区18,830㎡と年々減少

 

目黒区内で農業を営む根岸ご夫妻
目黒区内で農業を営む根岸ご夫妻

根岸ぶどう園のぶどう

さわやかな涼風が通り抜けるぶどう棚の下にはクローバーでできた緑の絨毯!ここが都心とは思えない景色と空気があり、近隣を冷やしてくれているようです。          


取り扱い品種は、天秀(2024年で終了)、シャインマスカット、ナガノパープル、グロースクローネ、マイハート、マスカサーティーンなど

持続可能な都市農業をめざして

根岸さんは、就農してまず「東京都GAP(農業生産工程管理)」(※)という認証の取得を目指しました。これには農産物の安全性、環境配慮、適切な労務管理などたくさんの項目があり、農作業をしながら認証を取得するまでの労力は並大抵なことではありませんでした。しかし、やってみると時間や資材、エネルギー消費の無駄が省け、働きやすくなったと言います。人と地球環境に優しい農業はSDGsの達成にもつながりました。その他「東京都エコ農産物認証」も受けているそうです。

※東京都GAP(農業生産工程管理)

「Good(良い)Agricultural(農業)をPractice(実践)する」の略で、持続可能な農業の取組みです。

   詳しくは、東京都産業労働局HP「東京におけるGAPの推進」

希少果樹栽培にも挑戦

若夫婦はある時、「フィンガーライム」に出会い、初めて見たその美しさと美味しさに惹かれ、栽培方法が確立していないにも関わらず、育ててみることにしました。より良いものを作るため試行錯誤した結果、一般的なものより種が少なくて食味の良い、大変美しいものが収穫できるようになりました。現在、オリジナルブランド「ジュエリーライム」と銘打ち、香りや色、風味の異なる4種類のフィンガーライムを育て、主にレストランなどに販売しています。詳しくはフィンガーライム東京をご覧ください。

宝石のような果物「フィンガーライム」


夏の気候変動が及ぼす影響

今年の春以降の暑さは記憶に新しいと思いますが、ここ数年で猛暑日や酷暑日が大幅に増えたため、ぶどうも違う品種に改植して対応しています。

ぶどうは苗から育て、大きな房をつけるまでに4年ほど要します。お天気を見ながら、日照や気温、土の中の水分などこまめにチェックし、新しいぶどうの苗木を育てています。

夏の暑さはぶどうだけではなく、新たに手掛けたハウス栽培のフィンガーライムにも大きく影響を及ぼしています。冬の寒さを防ぐより夏の暑さをどう防ぐかが重要になってしまいました。

ハウス内の温度を上げないために井戸水を汲み上げてハウスの屋根に向け設置したホースで、日に数回水を流すようにしました。できるだけエネルギーを使わず、流した水は下水ではなく土に戻すようにしたそうです。

ハウス内の温度を下げるため井戸水を放水する
ハウス内の温度を下げるため井戸水を放水する

取材を終えて

農地は、都心に暮らす私たちの生活に新鮮な食べ物を供給し、潤いと癒しを与えてくれるだけでなく、ヒートアイランド現象に貢献してくれ、そして災害時にも頼りになります。緑地である大切な農地を残せるように消費者である私たちに何ができるか、考えていきましょう!

初めて食べた「フィンガーライム」はとても美味しかったです。ぜひ、目黒区のみなさんにこの美味しさを知っていただき、知り合いのレストランやケーキ屋さんにお声掛けいただきたいです。



根岸ぶどう園(目黒区東が丘1-29-22)

観光農園開園日:毎年8月中旬より完売するまで。詳しくはHPをご覧ください   【農園の様子を発信中】

HP「根岸ぶどう園」 https://fruitsfarm-negishi.com/

Instagram「根岸ぶどう園」 https://www.instagram.com/negishi.budouen/