低下する紙パックのリサイクル率
「洗って、開いて、乾かして」。このひと手間をかければ、牛乳などが入っている飲料用紙容器(紙パック)は燃やすごみから価値のある資源になります。
紙パックのリサイクルは1980年代に始まりました。当時、紙パックは捨てるのが当たり前だったものが、貴重な資源をごみにするのはもったいないと立ち上がった消費者たちが道を切り開き、現在も続くリサイクルシステムを構築しました。活動は全国に広がり、2014年には回収率は44.7%に達しました。ところが近年、回収率は下がり続け、2020年には38.8%にまで落ち込んでいます。
なぜ、回収率が下がったのか。紙パックのリサイクルを推進する「全国牛乳容器環境協議会」はこう分析しています。
「いくつか理由があるのですが、少子化や小世帯化が進んで牛乳の消費量が減り、これに伴って紙パックの使用量も減っていること、品質保持や使い勝手のためにプラスチックのキャップ付きの紙パックなども登場し、この容器は1リットルの屋根型タイプに比べてリサイクル率が低い傾向にあること、この3年はコロナの影響が大きく、スーパーマーケットなどの店頭回収、自治体や子供会が行っている集団回収、学校給食用の紙パック回収などが停滞していることなどが挙げられます」
紙パックを新聞や雑がみに混ぜるとリサイクルできない
もう一つ原因として挙げられるのが、せっかく「洗って、開いて、乾かして」の手間をかけても、新聞や雑がみに混ぜて古紙回収に出してしまうことで、リサイクルできないケースです。
「紙パックはポリエチレンのフィルムでコーティングされています。紙パックを再生紙工場で溶解処理するときはポリエチレンを除去する工程を加え、良質なパルプのみを分離します。他の古紙に混入すると再生工程でポリエチレンが異物として残ってしまいます。そのため、紙パックが新聞や雑がみに入っていた場合、焼却処分されてしまうこともあります」
紙パックのリサイクルで生まれる3つの効果
紙パックの原料はバージンパルプです。リサイクルすればトイレットペーパーやティッシュペーパーなどに生まれ変わります。1リットルの牛乳パック6枚分のパルプは、トイレットペーパー1個分に相当します。
さらに、1リットルの紙パック1枚をリサイクルすると、23.4gのCO₂排出を削減できると言われています。
良質なパルプを使い捨てするのは本当にもったいない話です。飲み終えた紙パックはごみ箱に入れずに「洗って、開いて、乾かして」、回収拠点に出す。限られた地球の資源を大切に使い続けるため、ちょっと面倒でも、ひと手間かけて紙パックをリサイクルしませんか。
紙パックリサイクルの流れ
なぜ「洗って、開いて、乾かして」をするの?
洗う:洗わないと悪臭の原因になるためです。飲み終えてすぐに洗えば、軽くすすぐだけできれいになります。
開く:保管や回収時にかさばらないためです。また、開くことで洗い残しの確認にもなります。
乾かす:濡れたままにしておくと、カビが発生してリサイクルできなくなってしまうためです。
回収対象の容器はどんなもの?
目印は「紙パック」マーク(イラスト右上)です。
屋根型の牛乳パック以外にも、お茶やジュースで「紙パック」マークが付いていれば対象です。
注ぎ口付きのものや小さいものでも、「紙パック」マークがあればリサイクルできます(※)。
※ 自治体により回収方法の指定がある場合、回収対象ではない場合もあります。
取材協力:全国牛乳容器環境協議会 https://www.yokankyo.jp/