緩衝緑地を通って清掃工場へ
今年3月に竣工した目黒清掃工場を見学しました。さて、最新の設備を持ったごみ処理施設とはどんなものか。
まず興味をひかれたのは、工場に隣接する緩衝緑地です。あたかも公園のように作られていますが、騒音対策として住宅地と工場の間に距離を取るために設けられたものです。このことを含め、施設全体で徹底しているのが騒音と臭気対策でした。
騒音と臭いの対策
頻繁に出入りするごみ収集車の走行音を防ぐために、施設内の通路は「覆蓋」に覆われトンネル状になっています。また、ごみを下ろす「プラットホーム」の出入り口には高速シャッターやエアカーテンが装備され、音と臭いを防いでいます。おかげで、施設の周辺でも気になる騒音や臭気はありません。
見学コースに入っても至って静かでほぼ無臭、ここがどこか忘れそうですが、見学コースの窓からはごみ処理の工程が順を追ってみることができます。
焼却炉はごみが燃料
工場に運ばれてきたごみは巨大な「ごみバンカ」に貯められ、大きな爪を持った「ごみクレーン」で攪拌します。ごみの質を均一にして燃焼の温度を一定にするためだそうです。この温度は800℃以上に保たれ、ダイオキシン等有害物質の発生を防ぎます。焼却炉の温度を800℃以上に上げる最初だけ都市ガスを使い、後はごみ自身が燃料となって燃え続けるように制御されています。さらに臭いを防ぐためにバンカ内の空気も焼却炉に送られます。
清掃工場が生み出すもの
清掃工場はごみを処理する施設ですが、生み出されるものもあります。まず焼却灰は、埋立て処分されますが、それだけでなく、セメントの原料や建築資材としても利用されます。また発生する熱は温水や電気を作ります。目黒工場の発電能力は一般家庭の5万世帯分に相当する21500kWだそうです。工場が必要とする電力を賄い、さらに売電に回しているとのことでした。また温水は田道ふれあい館や区民センターに供給されて無駄なく利用しています。
さて、工場のシンボルともいえる煙突ですが、排ガス中の有害物質については徹底的にろ過し処理しており、まれに白く見えるのは水蒸気とのことでした。
黒子としての清掃工場
というわけで、最新鋭の目黒清掃工場は、徹底して騒音や臭いに配慮し、外観も威圧感のない設計で、更に壁面や屋上も可能な限り緑化した施設です。それは都市のインフラの一部として目立たない黒子に徹し、私たちの快適な暮らしを支えてくれる施設でした。
しかし、見学を終えて、私たちはこの黒子を忘れてはいけないとも感じました。ごみについては絶対の原則があるからです。それは「減量化」です。ごみは多いより少ない方がいい。黒子に頼る前に、これを基本としなければならないとあらためて思いました。