スーパーなどで購入した卵には賞味期限が表示されています。「これは食べ切らないと!」と慌てて巨大オムレツを作ったり、ゆで卵を大量に作りタルタルソースにしたりと使い切るために苦労した経験はありませんか?そして、使い切れなかった賞味期限切れの卵を「ポイッ」と捨てていませんか?そこで日本卵業協会の小坂裕一さんに卵の賞味期限や正しい保存方法などについて伺いました。
①生卵として食べられる目安は?
生食できる期間を賞味期限としておりますが、実は期間の算出には計算式があります。鶏卵が原因の食中毒は、ほぼ例外なくサルモネラ菌の異常繁殖によるものです。
サルモネラ菌はある一定の温度と時間の組み合わせで急激に増殖し始めます。急激に増殖を始めるまでの安全な期間は以下の計算式で求めます。
D = 86.939 - 4.109T + 0.148T²《(英国のハンフリー博士の研究によるためハンフリー理論》
(T:保管温度)
算出されたDプラス7日が産卵後菌の急激な増殖が起こるまでの日数=賞味期限表示可能期間となります。
(注意:購入後冷蔵庫(=10℃以下)で7日間保存した場合を想定しています)
例えば気温が10℃の場合なら 57日
18℃の場合なら 35日
25℃の場合なら 21日
30℃の場合なら 13日 となります。
上記の通り冬場は2カ月近い賞味期限の表示が可能で、逆に真夏は2週間の表示がせいぜいです。しかし、賞味期限が季節によって長くなったり、短くなったりでは消費者の誤解を受ける可能性があり、決まりではありませんが、実際に販売されているパック卵のほとんどが、安全を見て一年を通して14日前後の賞味期限で調整しているようです。
(日本卵業協会HP“賞味期限は生食できる期限” http://www.nichirankyo.or.jp/ansin/amsin01.htm)
②加熱して食べられる期間は?
①の説明時に触れたように、保管温度によって元々生食出来る期間が大きく異なります。そのため、例えば「賞味期限が切れてから10日」のように分かり易く表現することは不可能です。
賞味期限に関するガイドラインとして「鶏卵の日付等表示マニュアル」がありますが、21日を限度として表示することとなっており、加熱調理をすれば食用可能な期間は昔ながらの五感を総動員して判断する方法で決めるしかありません。卵を割って、様子を確認して、臭いをかいで、場合によってはちょっとなめてみる、という具合です。賞味期限などが表示されていなかった時代は、全て人が自分の感覚で判断していました。それと同じ方法です。
但し、卵は腐ると、文字通り「たまごが腐ったような臭い」がします。強烈な臭気ですので間違って食べてしまうことは無いと思います。
➂卵のラベル等に表示されている内容に関して、大切な表示は?
ラベル等に記載する内容は、その活字の大きさに至るまで決められています。そのために各社のラベル表記はほとんど同じ様式となっています。そのようなことから、責任の所在が分からないようなラベルのものは避けてください。
④スーパーで購入した卵を家庭で保存する時の注意は?
パックのまま入れましょう。冷蔵庫に卵専用のスペースが設けられているものが多くありますが、ドアの内側が多く、開け閉め時に温度の変化の影響を受け易い上、都度バタンと衝撃を受けるため好ましくありません。そのため、買ってきたパックのまま冷蔵庫の棚で保存することをお薦めしています。また、卵は基本的に鶏から産まれて以降、人手に触れていません。集卵、洗浄、殺菌、計量、パック詰め、全て機械で行います。(一部道の駅などの生産者直売のものは除きます)人手でパックからドアポケットに移し替えると折角の清浄卵が手の雑菌で汚染されることになりますのでそのままパックで保存して欲しいと思います。
⑤サルモネラの汚染率について
日本の卵は、生食する食文化に合わせるため、業界の努力でどんどん綺麗になり、世界に冠たる清浄な卵となっています。海外で卵かけご飯のような食べ方が出来る国はなかなかありません。欧米やアジアの多くの国では、卵は加熱して食べるのが当たり前ですし、生食したら食中毒になる可能性があります。
内閣府の食品安全委員会の調査では、国内で流通している卵のサルモネラの汚染率は10万個に3個と言われています。毎日1個食べると90年に1個当たる計算です。そこまで清浄化が進んでいます。
ちなみに70℃で1分間の加熱でサルモネラ菌は死滅します。
卵を安心して消費するための正しい知識を知ることが大事!そして五感を研ぎ澄ませ食物に向き合い、食品ロスを減らしましょう。